Top / USP経営ハンドブック / 6.USPを創る / 6.4.カテゴリを決める

私は不得手なことはやらず、得手のことしかやらないことにしている。
人生は「得手に帆あげて」生きるのが最上だと信じているからである。
本田宗一郎

一般に経営者には、大きくなりたいという意欲が強いのでしょう。
その結果、「より多くのクライアント」のニーズに応えようとして、個性を失った企業がたくさんあります。

個性的な企業になるためには「個性のあるクライアント」を対象に彼らのニーズに応えることが大切です。
カテゴリを決めるときには、顧客至上主義を一度忘れて、まず自分の得意なこと、自分の好きなこと、自分に都合の良いこと、から始めましょう。

カテゴリを決めるときに注意することを4つ挙げます。

  • クライアントから見分けられるか
  • すでに知られた競合はいないか
  • 1年以内に第一人者になれるか
  • そこに魅力を感じる感性豊かなクライアントは居るか

裏をかく

任天堂がWiiやDSで打ち出した方向性は、今までのゲーム機業界のまさに裏をかいています。
あなたがこの方法を採るのであれば、自分の業界、特にトップ企業の長所を書き出し、そのネガティブなイメージを自分の長所として考えてみましょう。

ゲーム機の印象→任天堂の方向性
不健康→健康に役立つ
引きこもり→家族で楽しむ
頭が悪くなる→脳を鍛える

再分化する

端的に言うと、「既存のカテゴリ+α」という考え方です。
αを加えることで、カテゴリを組み合わせたり限定したりします。
コンピュータで言うと、メインフレーム、ミニコンピュータ、ワークステーション、オフィスコンピュータ、パーソナルコンピュータ、ブレードサーバー、ラップトップコンピュータ、ペンコンピュータ、ノートブック、デスクトップ、ネットブックと言ったカテゴリに分かれ、それぞれ「コンピュータ+α」で説明できます。
ビジネスマン御用達Let's Note、映像ならVAIO、異論は有るかもしれませんが、消費者の脳裏にはそう言う棲み分けがあります。
あなたの得意なことをαに当てはめてみてください。複数でも構いません。
椅子に凝っている喫茶店、マーケティングに詳しい税理士、など異質なものを組み合わせるのも面白いでしょう。
但し、ニーズに関連性のない組み合わせは有効ではないので注意しましょう。

創作する

まったく新しいモノは、消費者には理解できません。
既存のカテゴリに関連付けて説明できないかを検討してみましょう。
消費者に広く知っていただくための説明会やサンプルなどが必要です。
多大なコストと時間が掛かりますので、事前に十分な準備をしておきましょう。

特化する

あなたのカテゴリに共感する感性豊かなクライアントが必要になります。
できたら、ある程度のファンを作ってから独立し、カテゴリを宣言することをお勧めします。

手軽軸・商品軸・密着軸

  • 手軽軸:より低価格で、より便利に買いやすくする
  • 商品軸:最新の技術の製品、最高のサービスを提供する
  • 密着軸:お客様のことをよく知り、望み・わがままをかなえる

通常はこの3つのどれかで差別化することになります。
例えば、美容院の場合は、以下のようになります。

  • 手軽軸:安くて早い理容店。例えば、10分1000円のQBハウス
  • 商品軸:最新技術・流行を駆使するカリスマ美容師。
  • 密着軸:「いつもと同じね」と言えばいつも通りに切ってくれる

これらの軸に一貫性が無ければなりません。
あなたの会社はどの軸を選びますか?
また競合他社の軸はどこにありますか?

手軽軸商品軸密着軸
ポイント効率品質暖かみ
Product(製品)大量生産
万人向け
無難
高品質
高デザイン
最新技術
オーダーメイド
Price(価格)手頃な高い高い
Promotion(販促)大規模広告
価格訴求
高級上質な広告
優良客限定
1対1
口コミ
Placement(流通)大量販売
チャネルの拡大
高級店・専門店
チャネルの限定
物理的に限定
組織中央集権
上意下達
フラット型
自由な雰囲気
顧客対応重視
末端に裁量
社員手際よい・効率的創造的愛想良い
評価・表彰新規客獲得優良技術開発顧客からの評価

場所を変える

いわゆる「商圏」でさえ、交通手段や行動パターンを反映することから地図上の位置関係からかけ離れることが多いものです。
ここで言う場所は、必ずしも物理的な場所ではありません。
クライアントの頭の中にある「場所」のことです。

競合から売り場を離す

同じようなモノがたくさん並んでいるところから、別の場所に移す。
例:果物をギフトショップに移す 靴乾燥機を傘売り場に移す
カテゴリを作って売り場を区別する
例:高級文房具を別のコーナーとして分ける
自分の商品しかない売り場を作る
例:御用聞き 宅配 会員専用サイト

ターゲットを変える

顧客層を変えることで別の意味合いが出てくる場合があります。
例:高齢者向けスキューバダイビング教室 介護付き旅行社

財布を変える

財布からの出所を変えることでカテゴリが変わることがあります。

税制上有利な勘定科目に移す

例:リース 経費として計上できる保険
後から収入として返ってくることを保証する
例:買い取り保証 助成金申請サポート付き

支出しやすい勘定科目に移す

例:記念日特別会計 研修付きPC→お持ち帰りPC付きPC研修

財布の持ち主を変える

例:プレゼント・ギフト 父母→祖父母

価値を変える

商品の持っている価値を変えることでカテゴリが変わることがあります。

オマケを付ける

例:食玩

実用品に趣味の要素を加える

例:高級時計 イラスト付き絆創膏

個人ごとに手を加える

例:オーダーメイド香水 名前入りボールペン

仕事のやり方を変える

こんなことを考えてみてください。
実行することは不可能だけれども、もしそれが出来たら即座に自分の会社に変化をもたらすものを一つあげるとしたらなにか?
そして、それを実現するにはどうすればいいのか考えてみましょう。

パソコン売り上げではHPと首位争いを繰り広げているDELLは、「デル・ダイレクト・モデル」という「仕事のやり方」で知られています。
パソコン業界も他の家電と同じように「春モデル」「秋モデル」に最新の性能と、買ったときからすぐに使えるソフトを付けて店頭に並べています。

しかし、パソコンほど性能で差の付けにくい商品はありません。
パソコンはCPUやメモリー、ハードディスクなどスペックがクリアです。
消費者が、スペックが同じであればどこのメーカーでも同じだと考えても仕方がありません。

「デル・モデル」では、メーカーが個性のある組み合わせを考えるのではなく、クライアント自身が自分にフィットした組み合わせを作ります。
注文を受けてからDELLは部品を調達し、組み立てて配送します。
結果として、在庫を極端に減らし、無駄をカットすることで価格を下げることに成功すると共に、クライアントとの会話の機会を作り、クライアントを特別扱いすることでクライアントとの関係を作っています。

ロスを削ったと言われるDELLですが、よく考えてみると次のような常識を無視しています。

  • 安いときに大量に仕入れるほうが安い
  • 大量に作り大量に送った方が安い
  • 大量に売ってくれる流通に乗せた方が、効率が良い

DELLはクライアントに密着したコンピュータメーカーという最も非効率なところから出発して、実は最も効率的なコンピュータメーカーになりました。

歯科医や美容院では、予約をキャンセルする人が減れば売り上げがかなり改善されるのだそうです。
暇な時間にクライアントに来てもらえれば、大きな変化になるという店舗も多いことでしょう。

「無理だと思うけどできたらすごい」ということはどこの業界にでも有ります。
業界の素人が社長になって、いきなり好成績を上げたり、何も分かっていないように見えるコンサルタントが成果を上げたりするヒントの一つがここにありそうです。

私は、ヒントは他業種にあると感じています。
さまざまな業種業態の経営者とお付き合いしていると、A業種では当たり前のことがB業種では画期的だということがよく分かります。

使うシーンの前後に優しさを

商品やサービスを使うシーンには注意が払われるのですが、意外と忘れられるのが使う前後です。

例えばペットボトルです。
それまでの缶飲料は、一度開けると飲んでしまわなければなりませんでした。
飲んだ後にキャップを閉めておけば、また飲むことが出来るペットボトルはとても便利です。

モノを捨てるのも面倒な時代です。
使った後に引き取ってもらえる中古市場が盛んになっています。
また、下取りサービスをしている店舗も増えてきています。

後で捨てやすい、後で使える、環境に優しい、など、コストが許すのであれば、容器にこだわることも消費者に好印象を与えます。
中食(なかしょく)産業と言われる、惣菜や弁当などを買って家庭で食べるような市場が拡大していると言われています。
切れているキャベツや入れれば済むダシなど下ごしらえの出来ている食材、栄養を考えた料理を決めてくれている食材の宅配など、料理の前のちょっとした面倒や手間を省きたいというニーズを解決するビジネスもあります。

商品やサービスを使う前後の面倒さを解消する仕組みを付け加えることで、他社との差別化を図り、クライアントの固定化を図ることが出来ます。

タブーを見直す

「自分たちの業界では、こういうことはしない。」
今まで当たり前のようにそう言われていたことを列挙してみましょう。
次に、各項目について、しない理由を書いてみてください。

  • 価値がない
  • 今は、まだ出来ない
  • 過去にトラブルがあった
  • 世間的にタブーになっている
  • 常識外れなのでしない
  • 採算が取れない

それらが、「本当にそうなのか?」をもう一度問い直してみましょう。
異業種の友人などに聞いてみると良いアイデアが出るかもしれません。

  • 意味がないと思っていたけれども、実は意外と面白い
  • 出来ないと思っていたけども、何かを解決すればできる
  • トラブルやタブーを乗り越えることに価値がある
  • 常識外れだと思っていたけれども、実現できるかもしれない
  • コストダウンの方法がある。利益アップに繋がる可能性がある

他の業界から招かれた素人社長が、大きな結果を生み出すことがあります。
同業種の常識が、異業種から見ると非常識に見えることがあるものです。
異業種で成功している例があれば、思ったよりスムーズに導入できるでしょう。

カテゴリの強さ

あなたのカテゴリにとって、最も困ることはより強い競合があなたのカテゴリを真似し、多大なコストを掛けて市場のイメージを塗りつぶしてしまうことです。
あなたのカテゴリが真似をしにくいほど、あなたのカテゴリは強いと言えます。

真似をしにくいとは、次のような状況を指します。

  • 重要な部分に特許を持ち、真似を防ぐ権利がある
  • 既存の顧客が離れてしまう
  • 今までのビジネスとの一貫性が保てない
  • 勝ち目がない
  • 多大なコストが掛かる
  • 利益が少ない
  • 人手が掛かりすぎる
  • ノウハウを習得するのに時間が掛かる
  • Etc…

あなたのカテゴリにこういった強さが乏しいのであれば、あなたの武器は速さだけになります。